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What's Mid Century House.

 

 

ミッドセンチュリーと聞くと、みなさん一番に思い浮かべるにはデザイナーズのチェアでしょうか。
ミッドセンチュリーの象徴とされるほど認識の高いものではありますが、
では、そんな素晴らしい家具を置いていた空間は、どんな空間だったのかご存知ですか?

 

そう言われれば、意外とわからないかもしれない…という方も多いかと思います。ヴィンテージ家具屋の私達もスタートした頃ははっきり認識していなかったので、よほど日本では紹介されてこなかったのでしょう。

 

ミッドセンチュリーをあまり判っていないクライアントが、あまり判っていないビルダーにお願いするのですから、出来上がる家が趣旨とズレてしまうのはもうお分かりでしょう。インターネットで調べても、ミッドセンチュリーとはかけ離れた家しか出てこず、再現する必要性を感じてきました。

 

そもそもミッドセンチュリー(1950年頃)とは、当時のモダンな特に住に関するスタイルを総称する言葉です。かつて歴史上では、ヨーロッパを中心にバロックやロココなどなど様々な生活スタイルが流行っては変化を遂げてきました。モダンスタイルは近代のスタイルで、細かく分けてミッドセンチュリーモダン(1940-60年代頃)は近代スタイルの先がけとなります。

 

 

 ---------無駄の中の豊かさ---------------

 

 

では、ミッドセンチュリーの家具の魅力について少し触れたいと思います。前述のデザイナーズの作品はその魅力を紹介しているサイト等も見かけますので、ここでは私達が取り扱ってきた、大衆向けの家具の魅力についてご紹介したいと思います。

 

1945年、第二次世界大戦がおわり、世界に勝利したアメリカは好景気になり、世界一の名の下、とても勢いのある情勢となります。宇宙をも制覇しようとしていたアメリカの勢いは、家の中までも色濃く入り込んできています。

 

例えば、写真のスプートニクランプやアトミックランプ。宇宙衛星がモチーフになっていて、夜空を感じるインテリアが数々見られます。

 

このころの家具の魅力を一言で言うと「無駄の中の豊かさ」と言えるのではないでしょうか。この一見、いけないことのように思える無駄という表現ですが、「無駄」は近頃の日本を取り巻く「コストカット」や「便利追求」の世の中で、なくした余裕のように思えます。

 

デザイン化された取っ手の飾りや脚の作り、つき板模様の手間、デザイナーも職人もその仕事を楽しんでいたのが手に取るように読み取れるものが多く存在します。このころの家具からでさえ「余裕」を感じられます。

 

工業製品として作られたものではありますが、手工芸品などとはまた違ったシンプルの中にぬくもりやおもしろみを感じられるのが、ミッドセンチュリーモダンの魅力なのだと思います。

 

 

 ----------引き算の建築物------------

 

話をミッドセンチュリーの家に戻します。

ある建築家の口癖「神は細部にやどる」この言葉をご存知でしょうか。建築物は大きく見えても細かいデティールの集大成と言います。つまり、小さな積み重ねなので、手を抜けないということですね。

 

ヨーロッパのお城など足し算の建築物は、重ねがさね装飾がされていて、ある意味ごまかしが効く建築物になっています。それに反してモダンタイルの建築物は引き算。直線的で装飾がない建築物はシンプルゆえごまかしが効かないデザインとなります。

 

その引き算の建築物で有名どころが、写真のミース・ファンデルローエのファンズ・ワーフ邸。鉄骨の構造とガラスのみの建物で、極限の引き算の建物です。ほかにも、ケーススタディーハウス#21やロスの崖の上に建つ#22スタールハウスも引き算の建物かと思います。

 

ところで、こんなスケスケの家はちょっと…と思いますよね。もちろんこちらは広大な敷地に建てられていますので、人目が気にならない場所に建っています。陽気なアメリカ人といえどもスケスケは誰も好みません。

 

要するに、見えないところにしか大きな開口やガラス面は存在しないのが、ミッドセンチュリーの家の特徴なのです。

 

 

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ではその大きな開口を作る理由はなんでしょう。

 

自然を家の中に取り込みたいから、感じたいからです。人間は動物ですので人工的な囲いの中に閉じこもるのは得意ではありません。安心できる囲いの中で自然を感じられる。単純な理由です。その単純を具現化したのがまさにミッドセンチュリーの家なのです。

 

自然を取り込むことにこだわりぬいた建築物があります。こちらフレイハウスⅡ。岩だらけの山肌の平らな場所に囲いと屋根をつけたようなつくりで、そこにあった岩を動かさず岩を壁の一部として残しています。

 

多くの建築物を残した彼は晩年、この家でよく裸で過ごしたそうです。さぞかし気持ちがよかったでしょうね。小さなおうちですが、決して窮屈さはなくのびのびと過ごした感じが伝わってきます。

 

 

また、ケーススタディハウスで有名どころといえば、#8イームズハウス。ケーススタディハウスは数人のデザイナーが参加した1940-60年代の雑誌の企画。他にも25の実在する建物があります。#8はイームズ夫妻がデザインしたローコスト住宅です。

ケーススタディ=実例 その名の通りモデルハウスとして誕生したこの家には、晩年のイームズ夫妻も住んだそうです。

 

とてもシンプルな間取りですが、すぐそばに立っているユーカリの木をいつでも眺められ、色んなシーンを楽しみながら過ごせる、そんな家だと思います。

 

 

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ミッドセンチュリーの建築家による建物は、建築家がかかわった家ばかりではありません。

 

建築家がかかわったような素晴らしい住み心地を一般庶民にも、というコンセプトのハウスメーカーが1960年代頃に現れます。それが、木造のアイクラーホーム。

 

アイクラーとは人物の名前で彼の名前はジョセフ・アイクラー。フランクロイドライトの設計した家に住む機会があり、その住み心地に感動した彼は、庶民にもこの住み心地を提供したい、と45歳で一念発起して立ち上げた会社が、アイクラーホームというハウスメーカーです。

庶民というのは人種・所得に関係なく、皆が平等に暮らせる街を目指して作ったコミュニティーで、アイクラーホームがある場所は、サンフランシスコ周辺やロス周辺がほとんど。

数十から数百戸の小さなコミュニティーで成り立っていて、小学校や病院までその中に存在しています。

 

今の日本でもそうですが、鉄骨造は比較的建築コストがかかります。木造で安価に、地域もコミュニティーを作って安全も確保できる。庶民には夢のような住宅を供給していました。1960年台建てられた多くの家が現在、価値が上がって売買されています。

 

 ------------価値の上がる家--------------

 

わたしたちミッドセンチュリーハウスはゴミになってしまう家より、そんな価値の上がる家をつくりたいのです。

 

本当に本当に気に入った家であれば、愛情を持ってメンテナンスするはず。そのためミッドセンチュリーハウスはメンテナンスフリーという言葉は使いません。それこそが家を長寿命化し、価値を上げる要素となるのだと思います。

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